本年度の研究は以下の3つの大項目について行った。 1 十八世紀ユートピア文学の位置づけ (1)新しい作品群の発掘、再評価については、ニューアトランティスものの系譜を18世紀にまで辿り、マンリーなど女性作家によるエロティックなユートピア群を調査した。 (2)ユートピア文学の系譜については、この時代のユートピア作品における、「理性」の構築という問題から、その系譜の見直しを行った。その際に、理性の枠からはずれるものも同時に生成されていることを確認した。 (3)学際性については、この時代の「科学言説」「道徳論」「グローバルな経済圏の確立」という面から、調査・研究を行った。 2 十八世紀ユートピア言説に関する一時資料の蒐集・整理 この項目については、主にECCOを利用することで、蒐集を行った。現在、その整理の作業に当たっている段階である。 3 理論的整序 この項目については、マルクス主義的ユートピア思想を批判的に検討することによって、主にローティのりベラル・ユートピア論を考察することで、新たな可能性を見いだすことができたが、一方で、その「現状肯定的」性格には一定の限界があり、この両者を止揚する必要性が明らかになった。
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