本年度の研究は以下の3つの項目について行った。 1 他のジャンルとのすりあわせ 前年度のECCOを利用した一次資料を用い、文学が印刷出版文化の隆盛の中で、法律、商業、植民地主義などの言説を取り込み、表現形式が変化していく過程を検討した。とりわけ、ブックセラーの役割に注目し、ジャンルの混淆状態の生成を確認した。 2 大陸とのネットーワーク オールデンバーグなどによる「科学言説に関する」書簡のネットワークが発展することで、フランス、オランダの思想家との書簡のネットワークが、ブックセラーも巻き込んで 行われている状況を確認し、また、内乱期、王政復古期、名誉革命において、大陸をまきこんだ情報交換(誤情報も含めた)の制度が確立されることも確認した。 3 新たなユートピア思想の視座の提示 ユートピア研究の新たな視座として、共和主義の重要性を重視し、啓蒙主義史観における「理性」の構築過程を、フーコー的視座から再検討した。また、歴史偏重の現在の文学研究の中で、ユートピア思想に関するレトリックの問題を扱う必要性を確認した。
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