研究課題
基盤研究(C)
本プロジェクトでは、1990年代以降のソ連文化研究の新しい枠組と成果を背景に、ロシア・フォルマリズムの全体像と成果について再考を試みた。具体的には、ロシアの言語思想、映画史、ソ連文学史、音楽研究などの分野でフォルマリズムの理論的可能性を検討し、従来の「構造主義の先駆者」としての理解枠を転換することにつとめた。野中はユーリー・トゥイニャーノフの理論的主著『師の言語の問題』を取り上げ、1920-30年代の英米の一般意味論の潮流との対比を行った。フォルマリズムの理論的関心・企図がロシァの枠を超えて、西欧と同時代性を示すことが明らかにされた。貝澤は、フォルマリズムの再検討に関する方法論的考察を行った。ロシア独自の言語思想、メディアの発達、知覚理論の三つが彼の提示する視座である。長谷川はソ連映画研究の観点からフォルマリズムを論じた。映画とフォルマリズムはまだ十分に論じられていない領域であり、本プロジェクトでもっとも活況を呈した領域である。中村は他者表象の問題京からフォルマリズムを論じた。バフチンとの対比やコーカサス・モチーフとの関連において他者表象の問題がフォルマリズム研究においてどのような位置を占めるべきかについて考察を行った。高橋は音楽とフォルマリズムという未開拓の分野に取り組んだ。ニコライ・メトネルの音楽観を対比項に選び、アヴァンギャルドに対する古典主義的な美学潮流の意義を強調した。武田は亡命文学とフォルマリズムという問題に取り組んだ。具体的には、亡命詩人であるホダセーヴィチとフォルマリストたちのプーシキンをめぐっての論争を分析した。全体として、フォルマリズムの多面性が明らかにされ、理論的・歴史的な調査が進んだと言えるだろう。
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