本年度は研究目的に従い、以下の研究を行った。 1)アムステルダムのBibliotheca Philosophica Hermetica所蔵写本BPH108のCD-Romを基に、中世フランス語版『金持ちとラザロ』の校訂版を準備し、注目に値する単語・表現を収集した。とりわけ、ピカルディ地方に特有の語彙に着目し、それらについて様々な資料を使い、その使用地域、意味の歴史的変遷の特定に努めた。 2)『金持ちとラザロ』が引用している中世フランス語ならびにラテン語作品を明らかにし、その対応関係、引用の手法、文体の変化などの点を検討した。 3)関連する中世フランス語ならびにラテン語の作品をより広く研究し、補足的な情報を収集した。 4)地方語の問題に関しても同様に言語地理学の成果を活用すべく、研究文献を調査し、『金持ちとラザロ』が制作されたピカルディ地方に特有の用語を浮き彫りにした。 5)10月にスリジー(フランス)で行われたギヨーム・ド・ドゥギルヴィル学会に出席し、研究の成果の一部を発表した。
|