研究概要 |
本研究は、歴史的、文化的な構築物としてのモダニズムを、国家言説、冷戦の政治言説、ジェンダー・セクシュアリティ言説の相互干渉性の視点からダイナミックに再考し、それらの言説の関係性からモダニズムのキヤノン性の構築過程の再考を目指すものである。当初の予定通り、越智はモダニズム文学を語る新批評の言説が当初必然的に帯びていた男性性を歴史的に検証し、論文「新批評の父たち」にまとめたほか、日本アメリカ文学の全国大会(平成18年10月)、および東京支部研究発表(平成19年3月)として、各々「モダニズムの南部的瞬間」、「キャノンの南部化--モダニズムと南部農本主義」として発表した。占領期の文化政策研究に関しては成果の一部をお茶の水女子大学COE成果刊行シリーズに収録予定である。 三浦はシカゴに滞在しながら、Walter Benn Michaels, M.Dubey, N.Brown, J.Tabbi, J.Ashton等と、いわゆるポストモダニズムとモダニズムの関係について議論を重ねた。F.Scott FitzgeraldのThe Graet GatsbyとJ.D.SalingerのThe Catcher in the Ryeについての論文をまとめ、また、Walter Benn MichaelsのThe Shape of the SignifierおよびEdward Saidのインタヴュー集の一部を翻訳、出版した。 吉川は、冷戦期のマスキュリニティが再構築された過程を検証するために、第二次世界大戦後のEarnest Hemingwayの作家活動とマス・メディアの関係を調査した。平成18年8月25日から同9月5日まで米国プリンストン大学図書館にて、Hemingwayの伝記の著者であるC.Bakerと、ヘミングウェイの作品を出版したScribner社の資料を収集した。その成果は『武蔵大学人文学会雑誌』に発表予定である。
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