研究概要 |
本研究は,近代フランスにおける民衆文化の諸相と文学への影響について,4名それぞれの研究分担者がその専門とする研究領域の独自の視点から切り込み,その実相の多面的な相貌を明らかにしつつ,従来ややともすれば等閑視されてきたフランスの民衆文化と近代フランス文学との関わりに学際的かつ独創的な見解を提示したものである。その具体的な成果は以下の三点に絞られる。 1.フランス民謡研究 民衆文化の宝庫ともいえる民衆的歌謡が,あれほど大衆に愛され親しまれながら,「大衆歌謡」であるが故にアカデミックな研究対象とはされてこなかった事情は,わが国はもとよりフランス本国でさえ同然であった。本研究において,フランス民謡の実相が浮き彫りにされると同時に,それがフランス詩に与えた影響の一旦が明らかにされた。 2.フランスレアリスム小説に見る民衆とレアリスムの諸相 フローベールの『ボヴァリー夫人』の土地ノルマンディーの現地調査と資料収集の整理・分析を行い,これを踏えて,その地勢,地名をルーアン近傍に現存する地勢,地名と同定する試みを通して,フローベールのレアリスムの有様と特質を明らかにした。 3.南仏プロヴァンス地方の民衆文化と文学 煌く陽光の下の自然と人間の営為を見つめる作家ジャン・ジオノの諸作品を手掛かりに,この地の民衆固有の思考体系に迫った。
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