研究概要 |
今年度当初に計画していた論文の発表3件について、次のように達成した。日本オースティン協会の機関誌に論文(オースティンの初期作品及び主に『分別と多感』を扱い、過去の履歴/歴史を語ることへの執着と懐疑について考察したもの)を発表した。同じくオースティンをテーマにして、幸福感やオースティン・セラピーについてとりあげた論文を静岡大学哲学会編『文化と哲学』第25号に発表した。そして、慈善と文学のテーマについて英語での論文発表は、1月のBritish Society for Eighteenth-Century Studies Annual Conferenceにおいて行うことができた。 特に3つ目の論文準備のために、夏期休暇中(8月17日から26日)に、大英図書館の手稿資料を閲覧するためロンドンに滞在した。期間が長くはとれなかったので、読むことができた部分は限られていたが、有効な情報を書きとることができた。読んだ資料は、主にMargaret Georgiana,Countess Spencerが残した手紙(Mrs Howeとの間のほぼ毎日書かれていた書簡。Mrs Howeの筆跡を読めるようになるためには時間がかかると思われたので、往復書簡のうちSpencerが書いた手紙のなかの一部)と家の記録(海外渡航時のパスポート的書類、使用人の配置や薬剤師らへの支払記録など)である。この発表に関連して、リサーチをスペンサーの娘のDuchess of Devonshrieに広げ、彼女がフィクションを出版したり、選挙活動に参加するなど、パブリックな場に出ていることに注目し、多くの手紙を書いたものの出版は行わなかった母親との対比を通して、貴族女性の活動について考察し、発表の準備を進めている。
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