当初の長期計画では、ロンドンの大英図書館にあるオルソープ文書を夏にかなりの時間をかけて読み、冬には海外の学会での発表を計画していたが、今年度まとまった時間を海外出張にあてることが困難な校務を担うことになったので、計画に変更を加え、出張を1度に抑え、期間も短縮して1週間の滞在とし、チャッツワースのアーカイヴでスペンサー伯爵夫人の記録の所在を確認し、そのかなりの部分を読むことに絞った。これまで彼女については主に手紙を読んでいたが、日記を読むことができて、研究に新たな一面を加えることができる見込みを得た。この調査の結果得た情報を使って論文を用意しているが、完成は来年度以降になる見込みである。 6月には、日本ジョンソン協会第42回大会にて、スペンサー伯爵夫人の娘のデヴォンシャ公爵夫人についてのシンポジウム講師として、母娘の手紙や出版物にかんする考え方の類似と相違をテーマにした発表を行った。「ミス・スペンサーからレディ・ジョージアナ、そしてデヴォンシャー公爵夫人へ--ジョージアナと家族、政治、表象、小説」という表題で、デヴォンシャー公爵夫人の政治の場での活動や風刺でのとりあげられかた、彼女が作者であるという合意がある小説についてなどが論じられたので、まさに私的な記録と公の場での活動や出版物にかんして考える良い機会だった。これについても、原稿を論文として投稿する準備がほぼできている。 3月には、関西の18世紀英文学研究会にて、フィクションの中での人生の物語の話し手と聴き手の描写のされかたに注目した論文を発表した。これについては、ウエブサイトで内容を公開している。
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