研究概要 |
1) フランスにおけるラスキン受容と文学的動向(特に高踏主義と象徴主義)の関係について、ことにルコント・ド・リール関連のものを中心に資料収集と整理をほぼ終え、色彩論を始めとする美術批評との関わりが深いことが明らかになった.また批評史におけるプルーストのテクストの位置づけもさらに進め、作家独自の美学を反映させたテクストではあるが、詩人もしくはラスキンの各時代の受容のあり方を強く反映した側面もあることが明らかになった.フランスの専門家にはすでにレビューを受け、専門誌への投稿を準備中である. 2) フランスにおけるラスキン受容と美術批評の関係について、特にプリミティヴ派の評価を巡って調査を行い、プルースト、ラスキン、マンテーニャに焦点をあてた論文を発表.この問題は美術館制度との関わりが強く、特にルーブル美術館における展示の仕方の変遷について詳細な調査をした.その過程で新たな資料が多く見つかり、その整理をし、この主題についてさらに考察を進める足がかりを形成した. 3) 2)の研究に絡んで、『近代画家論』以降のラスキンの著作と講演記録の調査を進めた.特にイタリア中世絵画と初期ルネッサンスの画家について、ラスキンの言説の変化をたどり、その一部を前述の論文に反映させた. 4) 昨年度に引き続き,フランス側でラスキンに言及した文献(新聞,文芸雑誌,文学作品,作家の日記,メモノート,草稿等)について、本年度は特に文芸雑誌(詩人のサークルが発行しているもの、また美術批評を数多く掲載したもの)に重点を置いて調査した.
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