研究課題
基盤研究(C)
本研究は、時代も地域も遠く隔たる古代ギリシア・ローマ喜劇と日本の代表的な喜劇である狂言を比較考察することによって、伝存作品の少ないギリシア・ローマ喜劇に新たな光をあてることを目的とするが、初年度はギリシアと日本を含む世界的な視野から、喜劇を生み出した民俗的、宗教的、社会的、文芸的背景を検討することによりギリシア喜劇の起源についても考察した。中務はまた20人程の研究者を組織してギリシア喜劇の現存作品と断片の精髄を翻訳・注解する作業を進めてきたが、これにより、従来アリストパネスの現存11篇、メナンドロスの4、5篇によってしか知られていなかったギリシア喜劇の多彩な特質と他の文芸ジャンルとの密接な影響関係が把握しやすくなった。中務個人としては、メナンドロス断片の研究により、メナンドロス喜劇の特質、とりわけ言葉の技巧を解明することに努めた。ただ、断片研究を主に行ったため、メナンドロス劇の構成や所作について狂言と比較するには至らなかった。高橋は狂言に現れる「嬲る」「化ける」というモチーフを取り上げ、これをローマ喜劇と比較するポイントとして検討した。これはプラウトゥスなどに見られる「芝居」あるいは「演じる」ということについての自覚的な表現が狂言にも見られるか否かという視点にもとづくもので、類型的な人物造形や常套的な劇の筋についてそれ自体を喜劇の題材とする手法は洗練度の高いものと考えられているが、そうした要素が狂言にも認められるとすれば、むしろ、いわゆるメタ演劇と呼ばれるような特質は喜劇に本質的なものであるかも知れない。
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