研究概要 |
本年度は二年計画の初年度として、シェイクスピアのエリザベス朝期の劇作品と古典古代以来の文学的伝統との関係に焦点を当てて、主に以下の三方向から研究を進めた。 1.Titus Andronicusにおいてアエネアスが「放浪の王」として言及されていることから出発して、『アエネイス』以来の文学的伝統のエリザベス朝文学における扱われ方を考察した。Dido, Queen of CarthageやThe Faerie Queeneと比較しながらTitusとOthelloを考察し二論文を発表した。Titusと古典文学との関係については"The Partner of Empire : Literacy and Imperialism in Titus Andronicus"において論じ、Othelloについて『アエネイス』との間テクスト性が従来論じられていたよりもはるかに強く認められることを「アエネアスとディドの変容-『オセロー』における文学的伝統」において論じた。 2.ホリンシェッドの『年代記』の「アイルランド史」の中でアイルランドがThe Comedy of Errorsで言及される魔女キルケーに例えられていることから、イングランドとケルト周縁地域との関係とキルケー表象の問題に着目し、特にHenry IV, Part 1におけるウェールズとファルスタッフに焦点を当てて考察を進めている。 3.シェイクスピアのエリザベス朝喜劇と比較するため、ミドルトンのジェイムズ朝喜劇におけるイングランド・ナショナリズムの問題を"I' the Heart of London"において分析した。
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