平成18年度研究計画に基づき、研究代表者および研究分担者は資料収集を行うと同時に、以下のような研究作業を行った。 佐々木は主たる研究領域であるディケンズについて、その小説『オリヴァー・トウィスト』とそれをもとに作られた映画についての考察を日本語と英語で発表した。アムステルダムで行われた国際ディケンズ学会で、アメリカの批評家エドマンド・ウィルソンによる画期的なディケンズ論(1941)を再考する学術講演を行った。また、アメリカに生まれ、イギリスで作家活動を行った文字通りトランスアトランティックな小説家ヘンリー・ジェイムズの技巧、特に小説の視点に関する論文を発表した。 若島は、トランスアトランティックという概念をさらに広く異文化間交流の問題につなげて研究を進め、エイミスが強い関心を示すウラジーミル・ナボコフの『ロリータ』をテキストとして、その諸言語における翻訳がいかにさまざまな文化間を越境する場を生み出すかを考察した論文を発表した。また、京都大学大学院文学研究科21世紀COEプログラム報告書『ナボコフ訳注「エヴゲーニイ・オネーギン」注解』の編集に携わり、ロシア文学の古典として名高いプーシキンの『エヴゲーニイ・オネーギン』がいかに他言語の翻訳書(特にフランス語訳)に負うところが大きいかを解明した。
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