研究概要 |
The Story of a Three-penny Bitをはじめとするアメリカ禁酒小説のテクストを主としてニューヨーク公立図書館でコピーするなどして入手につとめた。同様に、Catherine Maria Sedgwick, Augusta Evans, E.D.E.N. Southworthら入手が困難なテクストも相当数入手できた。目下、それら資料の分析を鋭意実行中である。また、今年度は大学院演習のクラスでハリエット・ストウの『アンクル・トムの小屋』を精読し、関連する研究論文を集中的に読んだ。来年度はそれをもとに、ストウの他の作品を含め、ストウ研究をテーマに講義を行う予定にしている。 研究成果の発表については、第46回日本アメリカ文学会大会シンポジウムにおいて、「メディアとしての禁酒小説」と題した発表をおこない、名古屋大学英文学会クリスマスセミナーでは、ゲスト講師として、「飯酒/禁酒の物語学」と題した講演をおこなった。また、市民教養講座である大阪大学懐徳堂講座で「飲酒/禁酒のアメリカ文学」と題した連続講演を行い、研究成果を市民に還元し好評をえた。 さらには、禁酒/感傷小説の重要モチーフである「依存」をテーマにした論集を大阪大学英文学叢書第五巻として共同編集することとなり、厳密な編集過程を経て原稿を完成させ、同書はすでに印刷作業に入っている。その中で研究代表者は、「共依存」の視点から、禁酒小説と感傷小説の双方に見られる涙する少女のモチーフの持つ意味を考え、両者の接点を抉り出す論文を書いている。
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