研究概要 |
平成20年度の研究実績は大きく2つに分類される。第1に前年度研究計画から今年度研究計画への重要な懸け橋となる両大戦間のアメリカ演劇のイデオロギー性の検証。この点から、アメリカの代表的歴史表象によるアメリカン・エデン神話再構築を促し、アメリカニズム肯定とアメリカン・アイデンティティ強化を図る大衆誘導演劇メディアとしてThomton WilderのOur Townを論じた研究「Grover's Cornersの地政学-Our Townが持つサブリミナル・メッセージ」を全国アメリカ演劇研究者会議第25回大会(平成20年6月29日、於:エスカル横浜)のシンポジウム「Our Townを読み解く-歴史と普遍、固体と永遠」で発表。第2に、本年度研究計画の中心課題、冷戦時代においてクイア周縁化を図ったアメリカ国家権力とイデオロギーおよびクイアの対抗言説をめぐる関係性の研究として、Tennessee WilliamsとLanford Wilson作品を中心に「アメリカ演劇の政治学」の視座から検討。(1)ヴェトナム戦争による身体損傷とトラウマを中心にヴェトナムからポスト・ヴェトナムに至る時代を背景に資本主義・戦争・クイアのアイデンティティ問題を焦点化した歴史表象と政治戦略に関する論考「クイアのポスト・ヴェトナム-ランフォード・ウィルソンの『七月五日』をめぐって」(『アメリカ演劇』第20号,pp.90・111)を発表。さらに、(2)赤狩りと同性愛者弾圧のパラレルを中心に、Tennessee Williamsのクイア演劇戦略を分析した「クイア・カップルの亡霊と遺産-テネシー・ウィリアムズのCat on a Hot Tin Roof」(『立命館国際研究』第21巻3号,pp,25-43)を発表した。
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