研究概要 |
平成21年度の研究実績は大きく4つに分類される。第1に、両世界大戦間のアメリカ演劇イデオロギーをアメリカ歴史表象の観点から検証した前年度全国アメリカ演劇研究者会議第25回大会シンポジウムの発表をさらに発展させ、Thornton WilderのOur Townを論じた「グローヴァーズ・コーナーズの地政学-『わが町』に見るサブリミナル・ポリティクス」(『アメリカ演劇』第21号,pp. 3-32)を執筆。第2に、冷戦時代におけるアメリカ国家権力とイデオロギーに対抗するクイア演劇の対抗言説に関する政治学的研究の成果として、自ら企画代表者となった日本英文学会第81回大会シンポジウム「テネシー・ウィリアムズのアメリカ」で、「ウィリアムズのアメリカ-暴力、病、ダブル・ヴィジョン」を発表した(『日本アメリカ文学会第81回Proceedings』,pp. 206-208)。第3に、ポスト冷戦時代の歴史表象のあり方を人種・ジェンダーの側面から検討した研究「歴史・キャノンのトランスフォーマー-劇作家Suzan-Lori Parksの"Rep & Rev"+"Ref & Riff"」を大阪大学言語社会学会2009年度研究大会シンポジア「世界文学のフロンティア」(2009年7月30日)で発表。そして最後第4に、本研究の最終年度の中心課題である過去4年間の演劇的歴史表象と文化的アイデンティティとの関係性に関する研究を踏まえ、演劇的想像力によるアメリカ正史、アメリカ神話の解体/脱神話化と脱構築する現代アメリカ演劇の政治学を可視化・定位するという最終目標として、自身の編著書『二〇世紀アメリカ文学のポリティクス』(2010年6月10日付発行予定)所収論文「アメリカ演劇、亡霊の政治学-冷戦・クイア・ポスト冷戦」(pp. 117-150)を刊行予定である。
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