平成18年度については、ソローとエマソン関係の貴重な資料を購入したほか、冬期休暇中に10日間カリフォルニア大学デーヴィス校の図書館で研修および資料収集を行なった。カリフォルニア大学において様々な学会誌のバックナンバーから、ソローにおける「詩論」、「野性」、「身体」をキーワードとした論文を資料として収集できたことは有意義であった。また、デーヴィス校の図書館には、ゲーリー・スナイダーのスペシャル・コレクションが保管されており、ソローからスナイダーに受け継がれた「野性の実践」という思想について考察を深める機会も得た。 18年度の研究成果としては、現在執筆中である著書『コンコードの文学』(仮題)の二章を推敲できたことである。その一部は以前刊行した「ソローにおける身体の論理」(日本ソロー学会編『新たな夜明け-「ウォールデン」出版150年祈念論集』2004所収)を、さらにもう一章は「ソローの耳」(『自然と生命の文学』松柏社、2001所収)を全面的に改稿し、増補したものであり、研究課題「野性の詩学」に連なる課題として、18年度の研究計画に挙げていた事項である。 また、ソローのエッセイ「ウォーキング」に見られる「野性」を基軸とした文学論については、とくに自然と文明の「境界」という観点から「境界の文学」という論文を刊行した。同論文を含む『シリーズもっと知りたい名作の世界3「ウォールデン」』(ミネルヴァ書房、2006)を上岡克己氏(高知大)と共編著として刊行した。
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