平成19年度については、ソローやエマソンらの超絶主義者、およびゲーリー・スナイダー関係の貴重な資料を購入したほか、夏期休暇中に二週間ハーヴァード大学ワイドナー図書館で研修および資料収集を行なった。ハーヴァード大学では、特に19世紀に出版されたマサチューセッツ州コンコードに関する歴史書を閲覧し複写した。また、ハーヴァード大学滞在中に、ソローやエマソンの故郷コンコードを訪れる機会を得たのも貴重な体験であった。というのも、本研究課題はソローやエマソンの文学を19世紀中盤におけるコンコード周辺の文化的・宗教的風土に置き直し「コミュニティの文学」として読む作業の一環であり、その意味においてコンコードの文化的風土を体感できたことはきわめて有意義であった。 19年度の研究成果としては、「野性の詩学の系譜学-エマソンからゲーリー・スナイダーへ」(『ヘンリー・ソロー論集』印刷中)を執筆できたことである。これは、本研究課題の中心をなす論考であり、日本ソロー学会におけるシンポジウム「エマソンの現代的意義」において発表した内容を改稿したものである。18年度に『シリーズもっと知りたい名作の世界3「ウォールデン」』(ミネルヴァ書房、2006)を共編著として刊行し、その中でソローのエッセイ「ウオーキング」に見られる「野性」を基軸とした文学論について論じたが、今回の論文は「野性」の文化的な意義についてさらに進展させた論考である。 平成20年度については、さらに言語における有機性の問題、想像力とエコロジーといった問題についてゲーリー・スナイダーの文化論を中心として考察し、前記の論文とともに報告書にまとめたいと考えている
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