平成20年度は本研究課題の最終年度にあたり、おもに成果報告書の作成に力を注いだ。これまでに執筆した「ソローにおける身体の詩学」「境界の文学--『ウォールデン』論」等を大幅に改稿して研究成果報告書にまとめたほか、「野性の詩学の系譜額--エマソンからゲーリー・スナイダーヘ」(『ヘンリー・ソロー研究』日本ソロー学会)を発表した。また、「野性の文化」という概念の考察を深めるにあたってレヴィ=ストロースの『野生の思考』等の著作に研究の範囲を広げたほか、「野性」という概念と言語との関連に関してさらに考察を進めている。 現在執筆中の研究は本研究課題の延長線上にあり、1件は「自己の詩学--ソローにおけるエゴイズムの諸相」を九州アメリカ文学会(琉球大学、5月9日に発表予定)、もう1件は“Language Without Metaphor: Thoreau's Poetics of the Wild"であり、「野性の詩学」という観点からWaldenの“Sounds"の章を再解釈するものである。研究報告書に収める予定にしているほか、学会誌に投稿の予定である。 さらに、19世紀マサチューセッツにおける超絶主義思想の研究に関連して、「ソローの愛した子どもたち--超絶主義思想と教育改革」という研究発表を日本英文学会全国大会第80回大会で行い、その概要をProceedingsに発表した。このテーマを基本に据えた同名の研究課題が科研基盤研究C(平成21-23年)に採択された。
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