今年度の研究計画にあったのは、1.研究組織の効率的運営、2.平成18年度の研究成果の公表、3.スイスアーカイヴでの調査、4.テクストデータベース処理システムの改善による資料整理・分析の高度化・効率化であった。この計画に基づき以下の成果が生まれた 1.研究会を定期的開催(二ヶ月に一回)し、本プロジェクトに関連して公刊予定の論文と著書の内容の検討を行った。 2.研究成果をまとめた著書『経験はいかにして表現へともたらされるのか-マックス・フリッシュの「順列の美学」』を出版した。この著書においては、フリッシュの思想と実践が、20世紀のモダニズム美学と戦後スイスのナショナリズムが出会う界面において、どのような位置づけを持ちうるのかについて、複数の章において詳論している。 3.チューリヒのマックス・フリッシュ・アーカイヴ、チューリヒ大学図書館、スイス文学アーカイヴにて資料調査を行った。30年代のファシズム期にスイスの知識人たちが書いた未公刊ないしアクセス困難な資料、および60年代末のパラダイム転換期におきた文化と政治をめぐる論争資料を体系的に収集した 4.日本独文学会と連絡を取りながら、マックス・フリッシュに関する文献データベース作成とその公開のための基礎作業を行った。文献の収集とデータ入力作業は終了し、現在は文献を通覧することによって、研究動向についての知見をまとめている段階である。この作業は現在も遂行中であり、2009年に公開される予定である。
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