今年度は2度にわたりイギリス現地調査・研究を実施した。研究協力者であるヨーク大学のグレアム・パリー教授と面会、意見交換を行い、また、数多くの助言を受けながら、現地調査を恙なく進行させることができた。イギリス現地では書籍商チズウェルの扱った書籍を手に取りその巻末ブックリストの確認に努めた。また、日本国内では閲覧・入手が困難である17世紀の様々な出版物を手に取ることができた。その他に、年間を通して、王政復古期の出版事情に関する調査として、チズウェル以外の有名書籍商の出版物や出版方法、チズウェルの義父であるロイストンによる出版物の分析等も併せて行ってきた。こうする中、17世紀英国で始まった「予約出版」という方式で出版された書籍と社会との関係が王政復古期の出版事情を考察する上で重要であることが判明し、これについては一例を論文にまとめた。また、チズウェルの義父ロイストンの出版物とチズウェルの出版物とを分類することが今回のブックリストの研究の鍵となることも判明したが、これについては膨大な量の文献の確認が必要となるため来年度引き続き分析作業を進めていく計画である。
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