研究課題
基盤研究(C)
活字メディア発展期であるとともに国民国家形成期や植民地獲得競争の時代でもあった、19世紀後半の英仏における文学とジャーナリズムとの相関関係を、戦争報道という側面から比較検討するにあたり、本年度は研究実施のための基礎的資料の購入に努め、特に報道関連文献を中心に収集をはかった。具体的には、フランスの『プレス』、『シエークル』、『イリュストラシオン』、イギリスの『デイリー・グラフィック』、『グラフィック』、『ブラック・アンド・ホワイト』等のマイクロフィルムを購入した。さらに中島がフランス国立図書館にも出張し、『デバ』や『モニトゥール』など数紙を閲覧した。それらをもとに基礎的データの抽出範囲と整理方法について検討し、比較分析の指標をいずれに設定するかについて議論を重ね、近代国民国家の神話を軸に進めることとした。そこで第一段階として、ヨーロッパ大陸内部での戦争であり、はじめての「近代戦争」と呼ばれるクリミア戦争に焦点を当て、普仏戦争時やボーア戦争時との比較をも試みた。その際、当時の英仏両国における政治・社会的動向を視野におさめつつ、関連トピックスを新聞・雑誌等より抽出する方法を選び、そこから得た結果を文芸への影響という点から分析してみた。第二帝政初期の言論統制下にあったフランスでは、出版界における戦争特需的なとらえ方が顕著であり、行政改革の遅れに対する批判が表明されたイギリスとの落差が確認されたが、両国ともナポレオン神話復活や英雄的兵士像への賛美を通じて、後の国民国家ナショナリズムと結びついてゆく要素がうかがいとれた。その成果は学会発表や論文投稿の形で公表した。平成19年度には新たな資料を入手して対象の範囲を拡大し、普仏戦争についてのさらなる検討と、それ以後の植民地遠征を調査の対象とする予定である。
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Mythes, Symboles, Cultures(『神話・象徴・文化』) 3号(印刷中)
ページ: 525-544