研究課題
活字メディア発展期であり国民国家形成期や植民地獲得競争の時代でもあった19世紀後半の英仏における文学とジャーナリズムとの相関関係を、戦争報道という側面から比較研究を行っており、完成年度である平成20年度での研究成果報告書作成を念頭に、研究のまとめを目指した。まずそのために、平成18年度に収集した基礎的文献に欠けていた資料の追加が必要となった。具体的にはフランスの『プチ・ジュルナル・イリュストレ』、『プチ・パリジャン』、『ジュルナル・イリュストレ』、イギリスの『イラストレイティド・ロンドン・ニューズ』のマイクロフィルムを購入した。さらに、必要不可欠でありながらも国内では入手困難な貴重な資料を補足するため、田中が大英図書館にも出張し、『ファン』、『グラフィック』、『ジュディ』など数紙を閲覧した。前年度に設定した比較分析の指標である「近代国民国家の神話」を軸に研究を進め、本研究の第一段階で行ったヨーロッパ内部の戦争から、第二段階としての植民地戦争に焦点を移した結果、英仏両国における兵隊募集制度および脅威の対象の差異が、戦争報道のありかたや文芸作品への影響を大きく左右するという事実を確認した。つまり、志願兵制度をとるイギリスに対して徴兵制度を採用するフランスでは、伝統的な「農民兵士の神話」の継承が植民地拡張政策を遂行した第三共和制の確立と平行して見出された。また、普仏戦争での敗戦以降、そのトラウマを抱え「ドイツの影」に怯え続けたフランスに対して、セポイの反乱以来、「逆侵略の不安」にさらされたイギリスにおける異人種観の特異さが浮き彫りとなった。今年度の成果は学会発表や論文投稿の形で公表しており、前年度と今年度の成果をもとに、次年度に研究成果報告書として完成させる予定である。
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Mythes, Symboles, Langues(『神話・象徴・言語』) 1
ページ: 167-178
『人文研究』 59
ページ: 98-110
Mythes, Symboles, Cultures(『神話・象徴・文化』) 3
ページ: 525-544