研究概要 |
本研究は「英語圏児童文学」という視座から、英語で書かれた児童文学全体の再評価を試みるための第一歩としてカナダ・オーストラリア児童文学の比較研究を行うものである。本年度は「自然」を表現する語彙に関するカナダの独自性を見出すために、以下の作品のデータベースを作成した。 1.L.M.モンゴメリ:『日記』1889-1908(The Selected Journals of L.M.Montgomery) 2.L.M.モンゴメリ:『赤毛のアン』(Anne of Green Gables,1908) 3.L.M.モンゴメリ:『青い城』(The Blue Castle,1926) 4.C.G.D.ロバーツ:『赤ギツネ』(Red Fox,1905) 5.スザンナ・ムーディー:『叢林地にて不便に耐ゆ』(Roughing it in the Bush,1852) カナダの国民的作家であるL.M.Montgomery(1874-1942)とCharles G.D.Roberts(1860-1943)の上記作品のテキスト・データベースを用いて、自然描写に使用している語彙を分析した。さらに、イギリス出身作家との比較のために、1832年にカナダに移民したSusanna Moodie(1803-1885)が記したアッパー・カナダにおける最初の生活記録『叢林地にて不便に耐ゆ』のテキスト・データベースから「自然」に関する語彙分析を解析ソフトを用いて行なった。ムーディーとモンゴメリ及びロバーツの語彙分析結果を比較し、イギリス人とカナダ人によるカナダの自然描写の違いを考察し、彼らの自然観を解析した。 カナダ大使館図書館・国際子ども図書館などを利用して、英語圏児童文学に関する調査・研究及び資料の収集を行なった。研究成果の一部は『赤毛のアン』出版100周年記念論文集(2008)、『英米絵本史』(2008)に収録予定である。また、龍谷大学図書館等を利用し、インド児童文学に関する資料の収集を行った。さらに、オーストラリア児童文学の第一人者である姫路獨協大学の牟田おりゑ教授とカナダとオーストラリアの児童文学の比較研究及び情報の交換を行った。
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