研究課題/領域番号 |
18520234
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
荻野 蔵平 熊本大学, 文学部, 教授 (00134429)
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研究分担者 |
高宮 正之 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (70179555)
BAUER Tobias 熊本大学, 文学部, 准教授 (30398185)
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キーワード | 本草学 / 植物誌 / 植物学 / 薬学 / 医学 / 『健康の庭』 / 体液病理学説 |
研究概要 |
近世初期の植物誌(本草書)の成立には、特にドイツのマインツにおいて15世紀末に出版された植物誌群が極めて重要な位置を占めている。具体的には1)Herbarius latinus(1484)、2)German Herbarius(1485)、3)(H)ortusSanitatis(1485)である。しかしながら、これらの文献の体系的な研究は、ヨーロッパ・日本を問わずまだ手付かずの状態にある。本研究では、上記3群の植物誌の文献学的研究とヨーロッパ諸国への影響を探り、この期の植物誌がさらに近代的植物学へと変貌していく過程を分析・記述することを目指す。 研究2年目の平成19年度の計画は、マインツの医師ヨーハネス・ヴォネッケ・フォン・ブライデンバッハの手になる(H)ortus Sanitatis(『健康の庭』)の解読であった。本書は、435章からなり、その内訳は382章が薬草を、25章が動物に由来する薬を、28章が鉱物を扱っている。その内容は、当時の植物学・薬草学に関する知識や世界観を反映しており、近世の自然科学の先駆けとなるような実証的な記述と並んで、占星術や呪術的信仰に基づく説明も多数含まれている。また、木版によるイラストが挿入されており、その数は379図にのぼる。 今年度の研究成果の一部は、荻野蔵平、バウアー・トビアス共訳「健康の庭」、熊本大学文学部『熊本大学文学部論叢』第98号、2008年、167-182ページ、ならびに、Bauer、Tobias/Ogino、Kurahei:Elemente der antikenHumoralpathogoie im"Gart der Gesundheit"、熊本大学社会文化科学研究科『熊本大学社会文化研究』第6号、2008年、41-58ページ、において発表した。前者は『健康の庭』の抄訳であり、後者は『健康の庭』の第4部の「検尿」をとりあげ、古代の体液病理学説(Humoralpathologie)が中世の医学や予防治療に果たした役割を論じたものである。
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