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2007 年度 実績報告書

イエローフェイスにみるアメリカン・オリエンタリズム研究

研究課題

研究課題/領域番号 18520237
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

宇沢 美子  慶應義塾大学, 文学部, 教授 (00164533)

キーワードイエローフェイス / フランク・ワタナベ / 異人種装 / 東洋人 / ステレオタイプ / ハシムラ東郷
研究概要

平成19年度は、1930年代前半にサンフランシスコで人気を得たラジオ・プログラム『フランク・ワタナベとアーチー卿さま』の現存するプログラムCDを入手し、この時代にイエローフェイスという演劇形態がラジオという媒体のなかでどのように変質し、延命したかを検討した。フランク・ワタナベのラジオ番組は従来取り上げられることのほとんどなかった素材である。イエローフェイスの20世紀的展開の一部として、この疑似日本人を主人公とするラジオ番組の意味を問うところに、本研究のユニークな意義と展開がある。
1900年代から10年代にかけて、アメリカのブロードウェイを席巻したイエローフェイスの演劇は、豪奢で審美的で悲劇的なアジアを数々の実験のなかで作り上げることに成功し、それがひいては環太平洋という意識を持ち始めたアメリカの演劇の新しいセルフ・イメージとなっていた。しかし、視覚にこだわる演劇と違い、ラジオという聴覚のみがたよりの媒体においては、イエローフェイスの営みは、へんな訛をもつおかしな日系人召使いが不用意につくりだす笑いを基本とする、喜劇路線をとった。その点ではむしろ、ウォラス・アーウィンのハシムラ東郷シリーズやオノト・ワタンナの1907年の召使い小説『デライラの日記』をこそ踏襲する路線であった。しかし、ハシムラ東郷が一人称で語られるために、率来人種差別のためのアクセントが人種に関係なく無差別に使用されるという特徴をもち、そのために、東郷コラムが笑いとともに鋭敏な社会批評性を発揮しえたのに対して、フランク・ワタナベをタイトルにするラジオ番組には社会批判性は希薄である。ワタナベの奇矯さは、彼個人の域をでることがない。逆にいえば、その分だけ、ワタナベは社会にとって「無難な」一員だったのであり、日系二世たちに彼が好意的に受容されていた理由をそこに見出すことができるのではないか、という結論をえた。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2007

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] ハシムラ東郷、「トウェインのお気に入り」と呼ばれた男2007

    • 著者名/発表者名
      宇沢 美子
    • 雑誌名

      マーク・トウェイン研究と批評 6号

      ページ: 10-17

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公開日: 2010-02-04   更新日: 2016-04-21  

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