研究概要 |
今期「ムスチスラフ福音書」の正順・逆順索引は作戦できなかった。小詞〓の処理作業が完了しなかった放である。次年度を期す。「ムスチスラフ福音書」における重出テクストの問題につき前回マタイ伝にひき続き,ヨハネ伝について調査・研究を行なった。この際第一にアレクセーエフらの「スラブ語ヨハネ伝」1998年を参照し,次に「マリア写本」「ゾグラフォス写本」「アッセマーニ写本」「ニコリヤ福音書」「サバの書」「オストロシール福音書」「アルハンゲリスク福音書」「ヴァチカン・パリニプセスト」「グラツア福音書」「ドブレシェ福音書」「バニシコ福音書」との比較を行なった。さらにヴァイスのヨハネ伝再構テクストも参照した。その結果,内的には1)伝統テクストとこれを一部改変するテクストの並存がままみうれ,その際,比較的前方の葉に伝統的テクストが,同むく後方の葉に改変テクストが出現する傾向を有する。これはマタイ伝と同様。2)テクストの改変は,主に,伝統的なocsa語句をslavonと用いたそれに言い換えることによってなされる。言い換えはシノニムあるいはシノニム的表現によって行なれれるのが通常である。3)テクストの伝承において,多くのケースで「ユリエフスキイ福音書」への連続性を実証しうる。外的には,1)canonは人工的措定とはい之重要,terraとaprakosの語彙論的違いは明瞭である。2)「ムスチスラフ福音書」は「アルハンゲリスク福音書」よりさうに1段次のステップ上にある。3)「バニシコ福音書」はロシア写本との関連性をほのめかす場合がある,等々が明らかとなった。
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