研究概要 |
サーカスの概念を一新したシルク・ドゥ・ソレイユを筆頭に,ハイテクを駆使したR.ルパージュの演劇,ラ・ラ・ラ・ヒューマン・ステップスやマリー・シュイナール・カンパニーのダンスなど近年隆盛を極めているケベックのパフォーミング・アーツを分析し,製作者(劇作家・演出家・俳優・パフォーマー)や受容者(観客・評論家)の観点からばかりでなく,政策や経営も含めた文化状況全体の中で,パフォーミング・アーツを考察した。 その研究を通して,その発展の大きな要因として,ケベック州政府の文化政策があることを明らかにした。文化・コミュニケーション・女性の地位省が、創作に関する助成、作品を広めるための助成など、各種の助成をアーティストに行っている。その成果の一端を昨秋の日本カナダ学会第33回年次研究大会(9月21日セッションIII,皇学館大学)で三人がそれぞれ発表した。 また,連邦政府の提唱するマルチカルチャリズムと,ケベック州政府が推進するインターカルチャリズムの比較を行った。両者とも、マイノリティー文化をマジョリティー文化に同化させるのではなく、両者をいかにして共存させるのかを課題としている。それは多くの場合、使用言語とかかわってくる。具体的には英語表現なのか、仏語表現なのか、あるいはその他の言語による表現なのかという問題である。パフォーミング・アーツの場合、言語表現への依存度は下がり、その結果、マイノリティー文化を統合しやすくなっていると言えるのではなかろうか。 シルク・ドゥ・ソレイユのメンバーが40以上の国から集まっていることはその好例であろう。
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