ヨーロッパ諸国の公共文化制度の特色と現状をドイツ語圏の演劇表現と制度を中心に明らかにすることを目的とする。ヨーロッパ諸国では公的助成制度によって芸術、文学、演劇、音楽などの文化活動を育成し、市民の文化活動を守るとともに、様々な公共文化空間を市民に提供し、自由で豊かな文化生活を制度的に保障している。ドイツの文化予算の総額は、フランスやイタリアをはじめとする他のヨーロッパ諸国と比較すると、特に多いというわけではない。しかし文化予算に占める演劇への公的助成金の割合は、他のヨーロッパ諸国の文化予算における演劇の占める割合と比べて圧倒的に大きく、額も群を抜いている。その歴史的背景はなにか。公共文化空間としての演劇は、今日の経済のグローバル化のもとでどのような展望を持っているのか。演劇文化の振興を図る意義は、どこにあるのか。本研究ではこれらの問いを念頭に置きながらドイツ語圏の演劇表現と制度を調査し、公共文化空間としての演劇の有効性と問題点を明らかにしようと思う
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