今年度は研究の初年度にあたり、関係資料の調査と収集を中心とした。収集した資料は、アメリカのイスラム教全般に関するもの、マルコムXに関するもの、モハメド・アリに関するもの、ブラック・パンサー党に関するもの、文学に関するもの、などである。資料の全てを検討し終わったわけではなく、資料収集自体まだ半ばである。今のところ07年度は次の課題に絞りつつ調査を進めるつもりでいる。1)Great Migrationと黒人イスラム教発展の関連、2)アミリ・バラカを入り口に、ブラック・ムスリムと文化活動(文学、音楽を中心に)。3)イスラム教会の音楽文化。これらの課題について、これまで日本で研究がなかったわけではないが、アフリカ系アメリカ人の言語表現と音楽文化を、奴隷時代からの口承伝統の流れを踏まえてとらえた研究はまだ見当たらない。そこで私のこれまでの研究(アメリカの宗教音楽文化研究、黒人霊歌からポピュラー音楽に至る黒人音楽文化の研究)を土台に分析すれば、おそらく新鮮な知見が得られると思う。付け加えると、今年度は当該研究の基盤となっているアメリカ宗教音楽文化研究と黒人霊歌研究が大体完成し、成果が数点出版されたため、そちらの作業にかなりの時間を費やさなければならなかった。
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