本年度は、初年度に引き続き、データの収集とその整理、分析を中心に、研究を進めた。 海外での調査としては、2008年1月に香港での調査を行い、香港大学図書館で、同大学の香港コレクション所蔵の新聞、雑誌、書籍などの資料の閲覧、複写を行い、前年度の調査データを補うとともに、新たな資料の発掘に努めた。 そのほかに、やはり前年度に引き続き、香港大学図書館、香港中文大学図書館、香港嶺南大学図書館等がWEB上で提供しているデータベースを利用したり、書籍の購入等を行った。これらの調査で、上海から香港に移ってきた作家・詩人と香港在住の作家たちの日中戦争中およびその後の活動についてまとまった知見を得ることができ、考察を進めていくための基礎資料が準備できた。収集したデータについては、論文の執筆のために分析、考察を行うとともに、目録およびデータベースとして公開していくための整理作業を進めた。 国内での調査は、2008年2月に、日本現代詩歌文学館で調査を行うなど、主に日本の詩人の戦争中の作品、動向について調査し、関連の書籍を収集、購入した。また、先行研究、関連の論文に学ぶとともに、本研究に関係のある研究会に出席し、参加者より指導・示唆を受けた。 昨年度の基礎的な調査と研究をもとに、本年度は対象を広げて、あまりメジャーでない作家・詩人や文献の調査と研究を行ったが、それにより日本・中国・香港の、特に詩人たちに、考察の対象をしぼりこむことができた。研究全体の方向としては、日中戦争前後の香港がどのような「文学空間」として機能し、それがどのようにその後の香港文学の展開につながっていったかという視点から考察を行ってきた。来年度は総括となる研究成果にまとめたい。
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