本年度は、チュニジアの社会状況と文学状況を捉えるために、以下の研究をおこなった。 とりわけ平成19年10月27日〜11月10日に現地調査(「チュニジア=日本科学・社会・技術シンポジウム」TJASSST2007への参加・発表を含む)をおこなった。 1)チュニジアの都市部と農村部の文化的・経済的格差についての調査 首都チュニスへの経済面・文化面での一極集中が激しいが、それに継ぐ大都市の活動も活発である。貧困地帯といわれた周縁部も近年、急速に経済状況が改善しつつある。 2)チュニジアの地方都市における大学の状況および書籍販売の状況 チュニジア第二の都市スースでは、むしろ文学研究では活発な側面がみられ書籍店も充実している。さらに国内の諸地方に大学が新設されつつある。 3)チュニジアにおける国民意識形成の政策:90年代初めの「連帯の日」についての情報収集 ベン・アリ大統領の主導した「連帯の日」jour de solidariteキャンペーンは、今日まで続いているが、日本の「赤い羽根共同募金」に近い性質をもち、とくに周縁貧困地帯の底上げと「国民意識」の醸成にみごとに成功したと言える。 4)チュニジアの作家エムナ・ベルハジ・ヤヒヤの最新小説『タシャレジュ』の研究 チュニジアの特性をふんだんに盛り込みながら、世界共通の現代人の問題を故意に匿名的な手法で描いたこの作品を翻訳し、分析した。
|