研究概要 |
当初,今年度の目標としていたことのうち、達成したものは以下のごとくである。 (1)作品の精読:かねて研究のために、タミル古代文学のさまざまな作品を訳し発表してきた。しかし、翻訳本として世に問うために昨年は翻訳に従事し、176作品(うち英雄詩62)を翻訳し訳注を完成させた。この作業を通じて研究のための訳文と翻訳のための訳文はまったく違うこと、翻訳のためには言語に通じるばかりでなく博物学者でなければならないことが分かった。この知見により、本研究も今後一層の精度を増すことになると思われる。 (2)些細なことだが、上記作業を通じて、筆者がこれまで「詞書」「奥書」としてきたものは、今後本研究でも「添書」とすることとした。 (3)古代史および文学の発生の問題との関連で,万葉古代学研究所(橿原市)の共同研究員として同所主宰の3度(7、8、1月)の共同研究に参加した。ここでえた重要な着想は、タミル古代英雄詩は、万葉集にならって「雑歌」と呼べるか否かということである。しかし、これに対しての答えを得るにはさまざまな研究が必要であり、結論としての成果を出すにはまだ先のこととなる。 反面、上記(1)の作業に膨大な時間を取られたために、マレーシア・クアラルンプル大学への資料調査には赴けなかった。それは、平成19年度に実行することとする。
|