本研究の目的は、ケンペルの旧版『日本誌』と新版『今日の日本』の文献対比作業を行うことであるが、平成19年度においては、まず江戸参府紀行(第5巻)を分析対象とした。この巻は、『日本誌』から切り離されて『ケンペル江戸参府紀行』として邦訳が刊行されている部分でもあり、ケンペルの日本論の中でも、日本においてとりわけ言及されることの多い巻である。それだけに、この巻については綿密な調査を行った結果、旧版がある程度の信頼性を有するものであることが判明した。またケンペル日本論の第1巻は、それぞれ異なる3つの部分に分かれるため、平成19年度においては、そのうち地勢論(第1巻の第1〜5章)の部分、および日本人起源論(第6〜7章)を検討の対象とした。また、為政者を論じた第2巻は、従来研究者の注目をさほど引かなかった部分であるが、この部分に関して新版とドーム編集の旧版との間には少なからぬ相違が見られることが判明した。また、ケンペルの日本論を「日独文化交流」の全体的枠組みに位置づけるため、平成19年度においては日独文化交流に関する貴重資料をスキャナーで読み込み、いつでも情報として取り出せるようにデータ・ベース化する作業も行った。
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