本研究は、日本誌の新旧両版を対比研究するものである。平成20年度においては、ケンペル新版『日本誌』の第4巻を扱った。この部分は、ケンペルが長崎を中心とする日蘭貿易・日清貿易について紹介している部分である。旧版においては編集者ドームの原稿解読ミスにより「歌がうまい」となっていたが、新版による確認の結果、「格闘がうまい」となっている等のことが確認された。この巻については従来より比較的研究が進められていたため、研究代表者の研究においては重要度という点に関して最優先の課題ではなく、研究遂行を最終年度に配分した次第である。また第1巻に関しては、日本博物学の部分の検討をおこなった。 本研究はケンペルが執筆した日本論を研究の対象とするものであるが、平成20年度は、平成19年度に引き続き、「ケンペルは日本の何を見なかったのか」という側面についても検討を進めた。調査の結果、ケンペルは日本の同時代(元禄時代)の文学、および芸術(歌舞伎等)についてほとんど注意を払っておらず、後の時代のツユンベリーやシーボルトと対照的であることが解明された。
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