19年度は、(1)海外の研究協力者との共同研究、(2)明清詩文集およぶジェンダー関連の資料調査、(3)研究テーマに関するこれまでの研究論文のまとめ、を行った。 (1)については、秋10月に海外の共同研究者である南京大学中文系の曹虹教授を招き、一ケ月間奈良女子大学で共同研究を実施し、10月28日同校にて公開研究会「明代古文と女性」を開催した。公開研究会では、研究代表者である野村が「明代における非古の文体と女性」を、曹虹教授が「明代における女性古文家の登場」を報告した後、参加者28名全員で討論を行った。この時の論文は、来年刊行の予定である。さらに11月にはジェンダーの視点から中国文学を研究する台湾の清華大学中文系の劉人鵬教授を招聘した。一週間の連続研究会の後、11月30日の学内報告会では、劉教授が「含羞の文学とジェンダー・セクシュアリティ」を報告、野村がそのコメンテーターを務めた。 (2)については、12月に国立公文書館内閣文庫に、1月に福岡市立総合図書館に、2月名古屋市立蓬左文庫に、3月に西尾市立岩瀬文庫などに赴き、資料閲覧および調査を行った。 (3)については、従来中国散文史の中で「非古」だとして看過されてきた家族や女性を語る散文が、どのように生まれ発展してきたのか、その過程で重要な役割を果たした明の帰有光について考察した論文数編を論文集『帰有光文学の位相』として仮製本し、これを研究成果として上梓するべく、20年度の科研費成果公開学術図書に申請を行った。結果、4月に出版補助金の対象として交付の内定通知を受け取った。
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