資料収集を進めるとともに、南アフリカで一回目の現地調査を行った。 (1)資料に関しては、アフリカのHIV/エイズに関する文献HIV/エイズをあつかったアフリカの小説、ジェンダーおよびセクシュアリティーをテーマにしたアフリカの現代小説を中心に収集し、内容を検討した。 なかでも、ポッワナのヤングアダルト小説で、若い娘を主人公にしてHIV/エイズをテーマに書かれた『はるか彼方』を論文で分析し、現代のアフリカ社会を構築するジェンダー関係を考察した。これにより、ヤングアダルト小説にありがちな安易な解決を小説で示しても、HIV/エイズという社会問題にアプローチするには不適であり、むしろ社会の矛盾を提示する方がリアルであることが明らかになった。 (2)3月下旬に南アフリカのケープタウンで、HIV/エイズの社会運動に関する調査を行なった。 現地の図書館や書店で上記の資料をさらに収集した。収集した資料をもとに、来年度はエイズ関連の小説の全体像をあきらかにしたい。 さらに現地では、「1000万メモリープロジェクト」主宰のジョナサン・モーガン氏に、エイズによる死を経験した家族が、その経験を語ることで乗り越えるのを助ける社会運動について話を聞いた。この調査に関する報告は、来年度「黒人研究の会」で行なう予定である。
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