平成18年度の研究によって、以下の諸点を明らかにすることができた。 (1)中唐の恋情文学は「風流」「好色」「多情」という価値観・美意識を基盤として生み出されていたこと。 (2)「長恨歌」は「白居易の個人的資質」と「中唐の時代思潮・美意識」の双方を「母胎」として詠じられた、艶詩の最高傑作であったこと。 (3)白居易を代表とする中唐の恋情(恋愛)文学が、「俗なるものの興起」という点で、平安朝かな文学と、本質的に共鳴するものであり、その影響にも深切なものがあったこと。 (4)中唐恋情文学を支えた「風流」の美意識は、国文学においては「みやび」の美意識として受容され、奈良から平安中期に到る日本文学史の展開において、本質的な役割を演じていたこと。
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