(1)『金瓶梅』における話法・引用の用例収集・『金瓶梅詞話』本の原文精読をとおして、話法・引用の用例を網羅的に収集した。・あわせて崇禎本、張竹坂本などの異本における状況を調査した。 (2)用例の分析・語学的分析、理論的分析、文学的分析の手法をおりまぜながら、通時的(古代漢語・現代漢語)、文体的(文言文、白話文、方言)な比較対照をも念頭におき、『金瓶梅』および白話小説の話法・引用のありかたを、用例のコンテクストの中で分析した。 (3)『金瓶梅』および同時代の白話小説の文献学・書誌学的研究・文学、語学、文体研究の基礎となるテキストの文献学・書誌学的研究を並行して行った。とくに、清平山堂刊行の小説については、版式と刻字の状況を詳細に分析することをとおして、出版の過程と小説の成立を推測した研究成果をまとめた。これは『金瓶梅』にやや先行する時代における白話小説の成立と出版の過程を文献学・書誌学的に明らかにしようとするもので、その成果は『金瓶梅』研究に応用すべきものである。 (4)研究成果の発表・2007年5月に大分で開催の「九州中国学会」、および8月に中国福建省で開催の「明代文学与文化国際学術研討会」で研究発表を行い、内外の専門家から批判と教示を得る機会とした。・論文「論日本内閣文庫蔵清平山堂所刊小説:以版式与刻字特点為視角」を、中国の専門誌である『明清小説研究』に投稿し、査読を経て掲載された。・研究成果報告書を作成した。
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