今年度は、調査研究旅行及び三回の研究発表会によって、考察を深め、討議を重ねた。2008年6月7目、今年度最初の会合では、一年間の研究予定を決めた後、「市河三喜夫妻とハーン」と題して河島が研究発表を行った。 2009年2月16日〜19日には山形への調査研究旅行を実施、米沢、尾花沢、酒田、鶴岡等の土地を検証するとともに、この機会を利用して二回の発表会を行った。17日の発表は、土谷による「異文化理解の大大誤解-皆川博子の『猫舌男爵』をめぐって」、18日の発表は、牧野による「ハーンの「東洋の土を踏んだ日」について」で、」いずれも一時間半を超す、充実した内容であった。劉、橋本も、それぞれ資料研究のための出張によって、異文化理解と偏見についてのケースを考察している。 平成20年度は当課題の最終年度であることから、2009年3月には六人全員の論文をまとめて、「研究成果報告書」として一冊の冊子にまとめた。この成果は、2009年6月新曜社から刊行予定の『講座小泉八雲』全二巻に反映されることになっている。すなわち、その一巻である「人物編」には、平川祐弘「ハーンにおけるクレオールの意味」、劉岸偉「神戸クロニクル時代のラフカディオ・ハーン」、河島弘美「市河三喜・晴子夫妻とハーン」が、また「作品編」には、牧野陽子「聖なる樹樹」「民話を語る母」、土谷直人「ハーンの目、シュレイデルの目」、橋本順光「ラフカディオ・ハーンの時事批評と黄禍論」がおさめられることになっているからである。これらは、従来の研究の中心であった日本と西欧はもちろん、さらにそればかりでなく、東欧、ロシア、中国などを専門分野とするメンバーによって構成されたグループだからこそ達成できた、豊かな研究成果であると思われる。
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