第1年目の平成18年(2006)度は、主として夏季休暇を利用しての現地調査に費やした。2006年8月 日〜17日にかけて、中国東北地方(延辺、長春、大連)を現地調査した。延辺では延吉市に赴き、小説家金学鉄の自宅を訪れ、夫人から生前の金学鉄について聞き書きを行なった。また詩人沈連沫の生家に行き、実弟が保管して来た詩人の肉筆原稿をカメラに収録した。さらに、詩人尹東柱の生家、墓地、通った中学などを踏査した。そして延辺大学図書館で資料調査を行ない、新資料発見の成果を得た。 長春では、1945年以前にここで活動していた朝鮮人文学者たちの住居、生活地域をほぼ特定できたのが大きな収穫だった。また市立図書館で日本名で活動していた「今村栄治」の作品を発掘できたことも貴重な成果だった。 一方、最後に訪れた大連では、大連図書館(旧満鉄図書館)に赴き、戦前の資料調査を行なおうとしたが、担当者から「日本人には資料は見せない」と拒絶された。この間の日中両国間の政治情勢が反映しているのかも知れないが、本来公平であるべき学問世界において、こうした感情的な資料開陳拒否を行なうといった対応は、極めて遺憾なことであり、今後の速やかな改善が求められる。 こうした現地調査と並行して、年間を通して、手元にある資料類の整理・分析を行なった。これらはいずれ科研費報告書の一環として、資料目録としてまとめる予定である。
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