2006年8月に、中国東北地方(延吉、長春、大連)に赴き、文学者たちの居住地および資料の調査を行ない、長春(旧・新京)では、安壽吉、廉想渉、玄卿駿らの居住地域を、大略推定することができた。また、解放後、旧満州地域から北朝鮮に移り住み、文学活動を行なうことになった文学者たちの、解放直後の北部朝鮮での足跡は長らく不明であったが、それらを大略確認することができた。そうした活動の一つである、1946年8月15日に、解放一週年を記念して一挙に出版された一群の紀念作品集のうち、詩集アンソロジー『巨流(八・一五解放一週年紀念)』(八・一五解放一週年紀念 中央準備委員会編・発行、1946年8月15日、ピョンヤン)を入手できたのも、今回の研究調査での大きな収穫の一つであったといえる。 さらに、植民地期、旧満州で、日本名で日本語作品を多く発表したとされながら、その作品を確認することの困難な、日本人名「今村栄治」の作品を、まとめて新発掘することができた。これらはいずれ、資料集として公刊する予定である。しかし、下記4の「研究成果」にも記したごとく、中国、ことに資料所蔵の一大中心地である大連において、日本人に資料を公開しないという状況が続いている。2009年度の科研費申請を見送った所以である。今後、これが解禁された後に、図書館の所蔵資料を調査する必要がある。以後の課題としたい。
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