2007年度の主な研究成果は、当プロジェクトの代表者と分担者を中心に、同年11月23日から25日の三日間、沖縄で日本演劇学会の秋の研究集会を開催した事である。研究集会のメインタイトル「演劇(芸能)の中の女性の表象」は、当研究の「世界の中の沖縄演劇-女優の表象を中心とした考察」をふまえたもので、特に24日の「シンポジウム」は、当プロジェクトの成果発表の場でもあったが、沖縄を代表する現役の女優2人、大阪の歌舞伎研究者、そして、戦後50年間存在した沖縄の女だけの『乙姫劇団』出身の古代宗教研究家を研究協力者にむかえ、貴重な証言を記録することができた。また、同日の「対談」では、芥川賞作家の大城立裕氏から、彼の創作した新作組踊における女性像についての貴重な話を聞きだした。こうした内容は、沖縄藝能史研究会会員や、地域の人々にもオープンにした。 また、代表者と分担者は、役割を分担しながら、京都の花扇太夫や女性能楽者、英国・香港の女優などに取材して、沖縄演劇における「女優の表象」を相対化することに努め、「大和」の広義の意味での「女優」の歴史と照らし合わせた上でも、沖縄の辻などで芸能を継承してきた女性たち(ジュリ・当て字は尾類)を「女優」として位置づけることができることが確認された。琉球古典踊・沖縄芝居・琉球舞踊の中のジュリの表象、『乙姫劇団』の創立メンバーが戦前の辻遊郭で培った芸を生かした事実など、大和側の女性芸能の継承との類似点・相違点が浮き彫りにされた。 さらに、アメリカのオリエンタリズムの産物であると片付けられがちな戦後のアメリカ映画『さよなら』(関西の少女歌劇団がモデル)及び『八月十五日の茶屋』(辻の茶屋の再建に尽力した実在のジュリがモデル)などの映像におけるヒロインたちは、ポストコロニアル的な位置づけと共に、「芸能する女性」のグローバルな表象として再検討する余地があることが確認された。
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