研究課題/領域番号 |
18520282
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研究機関 | 梅花女子大学 |
研究代表者 |
加藤 康子 梅花女子大学, 文化表現学部, 教授 (60299005)
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研究分担者 |
三宅 興子 梅花女子大学, 文化表現学部, 名誉教授 (80166131)
高岡 厚子 梅花女子大学, 文化表現学部, 名誉教授 (30107122)
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キーワード | 絵本 / 狐 / イソップ寓話 / 児童文学 / 挿絵 / 伊曽保物語 / 擬人化 / ラ・フォンテーヌ |
研究概要 |
世界中で絵本の魅力が注目されているが、作家の個性および各国の歴史・文化や国民性を反映した特徴が見出せることを、英仏日の絵本の比較から考察しようとした。共通テーマとして、動物が主人公の作品として、イソップ寓話の狐の話から「狐と烏」「狐と鶴」等を取り上げた。 イソップ寓話は世界へ伝播し、各国で書き留められ、口伝えで浸透した。時代や国によって話の内容や教訓、登場する動物などが異なる話もある。絵が加わり、ことば以外の表現が増えることで新たな表現世界が広がった。イギリスでは、多くのイソップ寓話の本が出版され、100話ほどを収めたテキスト体裁のものから、一話を絵本化したものまで多様に受容された。それに対してフランスでは、ラ・フォンテーヌが『寓話』の中で、独自の文体と解釈によってイソップの話を再話したものが長く定着し、その文章に多くの画家が各々挿絵を添えてきた。英仏のイソップ絵本は、中世の挿絵に端を発しながら、話によって定番の描き方を継承している。例えば、「狐と烏」では、一本の木に止まった烏が丸いチーズを咥え、その下で狐が恨めしそうに見上げている構図が多く見られるが、その背景、烏が咥えている物、狐の表情などを比較していくと、時代、国、作家の違いが見出せる。 一方、日本では室町期にキリスト教布教の宣教師達から伝えられたイソップ寓話は「伊曽保物語」としてローマ字や国字で何度も刊行された。幕末には『絵入教訓近道』にも収められ、その挿絵には和服を着た烏や狐が描かれていて日本独自の受容が見られる。明治以降は再度英語からの翻訳本が『通俗伊蘇普物語』など様々に出版され、挿絵にも英語本の影響が見られる。大正・昭和期に絵本が盛んに刊行されるようになると、その擬人化などに日本の多様な狐のイメージが反映された特性も見受けられる。イソップ絵本を英仏日で比較することは、イソップ寓話の解釈のみならず、絵本における各国や画家の個性の違いを発見できる、興味深い視点と考えられる。なお、この成果を基に2009年度に梅花女子大学において資料展示、関連講演を予定している。
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