平成18年度は北京の國家圖書館及び中國藝術研究院で崑劇歌譜を蒐集した。中國藝術研究院藏の古樂譜「北西廂訂律」(明朝の胡周冕の作)の内容を世界で初めて明らかにし、現存最古の元曲(北曲)譜として位置づけた。その中から「折桂令」曲牌のメロディーを元朝の「中原音韻」及び崑曲の樂譜に照らし、元旋律が遺留してゐることを、論文「甦る西廂記の歌聲」(明木茂夫編「樂は樂なりII-中國音樂論集・古樂の復元」所載、平成19年3月)に述べた。また作者胡周冕が、音樂史上に名の殘る胡章甫と同一人物であることを同論文で論じた。北西廂訂律は極めて重要な書籍なので、十九年度はその細かな分析に力を用ゐることとならう。その成果により、東洋音樂及び詞曲研究は局面を大きく轉換する筈である。
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