研究概要 |
平成十八年度,北京にて発見した「北西廂訂律」は,現存最古の元曲譜として極めて貴重なものだったので,平成十九年度はその詳細な分析のために,比較の對象となる曲譜を蒐集し,比較を行なった。その結果「北西廂訂律」に古メロディーが留存してゐることがいよいよ明瞭になって來た。成果は報告書等に發表する預定である。 メロディー研究の基礎となる字音研究に於いては,范善臻「中州全韻」の七聲體系こそが崑曲の正統であることを示す証據を「韻學驪珠」など諸韻書に求め,學會にて口頭獲表した。 メロディー研究の今一つの基礎となる音階研究に於いては,太平御覧等に見える「制は角音にのっとる」との記載にもとづき,ファ、ファ#、シ、シ♭を曖昧にする音階が唐代より宋詞、元曲を経て毘曲に至るまで基本原理となってゐることを明らかにし,臺灣にて口頭及び誌上にて發表した。また分措者中村光彦の指導する卒研にては,機器吹奏を以て崑曲笛の音階を試測し,今後各地の古樂器の音階を計測するための準備を整へた。
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