これまで行ってきたイスラーム世界におけるアレクサンドロスの神聖化とその歴史意識におけるアレクサンドロスの位置づけについての研究を最終的にまとめ、博士論文として18年度中に提出した。この作業の中で、イスラーム勃興からモンゴルの侵攻までの時代(7世紀〜13世紀初め)のアラブ・ペルシア文学における時系列的な世界観の変遷と空間的・地理的な世界観の拡大の関係について検討を始めた。 アラブ・ペルシアの地理書・博物誌・旅行記、物語関連の資料収集を主にフランス、ドイツなどの図書館で行った。アラビア文字入力の作業の依頼を予定していた学生が留学のために日本を不在にすることになったため、本年度はテキスト入力の作業はあまり進まなかった。その代わりに海外調査・資料収集の回数を増やした。 パリにある人間科学研究所(Maison des Sciences de l'Homme)と申請者の所属機関である国立民族学博物館の間で結ばれた研究交流協定(2004年12月8日締結、2009年度まで)の枠組みにおいてパリに招聘され(2006年5月1日〜8月1日)、マリナ・ガイヤール氏(CNRS「インド・イラン世界」)、マルガレット・シロンバル氏(ENS講師)などのヨーロッパの研究者との研究交流を行った。アレクサンドロスの伝説と中東の他の物語(サマケ・アイヤール、アラビアンナイトなど)が共有する主題や世界観について意見交換を行った。
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