アラブ・ペルシア文学におけるアレクサンドロスと辺境、または異界との結びつきの象徴性について、多様な資料を総合的に検討する。未知の世界を描写する際の文学的なトポスとして、アレクサンドロスがどのような役割を果たしていたかを明らかにすることは、アレクサンドロス研究に貢献するのみならず、卓越した歴史的人物が後代のテクストにおいて、どのように表象されるかという問題のケーススタディともなる。 さらに、ヨーロッパや東アジアの文学にも考察を広げ、辺境、異界、未知の世界に対するイメージの根本に潜む人間の基本的な感情-好奇心、恐れ、憧れ、驚き、差別、征服欲など-を探る。これらの感情から生まれた表現は文化、時代、言語によって様々である。文学研究と民族学の境界を越え、多文化圏の異形の表象を比較し、相対化する。
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