本研究は、デジタル化した世界言語地図(世界言語地図ベクトルデータ)を作製し、GIS(地理情報システム)によって、申請者たちが収集してきている膨大な諸言語の諸特徴を組み込み、諸特徴のデータを地図に連動させて表示、検索し、従来の言語類型論や言語系統論を統合する新しい言語類型地理論的研究を行うことを目的としたものであった。そのため、本年度は、世界対象の言語分布をデジタル化し、GISによって汎用的に活用できるような、世界言語地図ベクトルデータを作成した。これは、今後の本研究の基礎となるべきもので、『世界言語地図(Routledge社出版Atlas of the world's Languages)』の第1版および第2版を基に、以下のような手順によって作製していった。 1.『世界言語地図』の第1版と第2版を詳細に比較し、それぞれによって対象とすべき地図のページを特定する。 2.上記で特定した言語地図のページをスキャナーでスキャニングし、デジタルデータ(イメージデータ)として作成し、それらのイメージデータに補正を施し、実座標値を付加する。 3.上記の作業によって得られたイメージデータから、指定する地域の言語区域をGISによってベクトルデータ(図形データ)として利用することを可能にするために、対象の言語区域を閉図形化されたポリゴンとして図形化(ベクトル化)した世界言語地図ベクトルデータを作成する。 論文としては、山本がこれまでの世界言語地図に基づく研究状況ないし動向を概観し、本研究およびそれによって期待される成果や意義を論じ、乾がGISを利用するクシ・オモ系言語の研究について論じた。
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