|
本研究の目的は、脳機能計測、特に機能的磁気共鳴イメージング法(fMRI)および脳波計測(EEG)の手法によってヒトが言語タスクを遂行中の脳活動を特定する実験を行い、そのデータにもとついて、ヒトが脳内で文情報を処理する過程を論理文法的手法を用いてモデル化することにある。具体的には、文情報のモジユールごとの空間-時間的処理過程の解明、および脳内文処理の基本ストラテジーの解明、の2つの観点から脳機能計測実験を行った。ヒトの言語処理過程に関するデータにもとついて、文処理ストラテジーおよび文処理規則をダイナミック統語論等の形式文法理論を用いて構築した。本年度は、主として、文処理過程において作業記憶内に構築された文解析情報が処理時間にともなって減衰するという仮説にもとつぎ、英語の等位接続構文、右ノード上昇(RNR)構文および日本語の等位接続構文の脳内処理の計測を通じて、作業記憶がヒトの文処理過程に影響を与えていることを、心理実験およびfMRI実験によって明らかにした。またHead-Driven Phrase Structure Grammarの枠組みにもとづき、実験データを説明しうる脳内言語処理モデルを提案した。
|
