本年度(平成19年度)は昨年度の予備的調査をふまえ、ミャンマー連邦東北地方で話されているパラウン語の音声に関して、昨年度は実施できなかったシャン州北部のナムサン地方での本格的な現地調査を実施し、基礎語彙の音声データを録音・収集し、また補助的にスタジオで録音したデータも用いて、基礎的な音声分析とそれに基づく音韻的な分析・考察を行う予定であったが、当該年度中の平成19年8月から9月にかけて発生したミャンマー連邦国内の政情不安によりミャンマー連邦への調査目的の入国は非常に困難な状況であると判断した。そこで9月に計画を変更し、11月に隣接するタイ王国へ出張をし、タイ・ミャンマー国境地域に居住する、あるいは国境を越えてくるミャンマー系の少数民族の多言語状況について調査した。 パラウン語の音声録音データは本年度は収集することができなかったため、研究代表者および研究協力者が昨年度に記録したパラウン人へのインタビュー記録と、日本国内に住むパラウン人の協力によって記述・収集したデータ(音声データなし、音声表記のみ)を用いて音韻的な考察を行った。考察の方法は、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所作成の基礎語彙表を用いて記述された約1000語のデータを基礎資料とし、その中から弁別的な言語音を抽出するもので、その考察に基づきパラウン語の音素目録を作成した。また昨年度の記録から、ナムサン地方パヤージー村およびマンダレーにおけるパラウン語の使用状況についての記述を行った。
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